Championship Manager 01/02 (CM01/02) 日本語ローカライズ裏話 (その3)

だがこれですべてが終わったわけではなかった。

ゲーム本体の翻訳作業は他の2人の人(日本在住の日本人)が担当しているが、進捗が思わしくなく、手伝ってほしいという指示がイギリスから来たのだ。

ゲームの中でもマッチイベントは独立データなので、とりあえずそちらに手をつけてくれとのことだった。マッチイベントとは試合中の実況のことで、試合後に参照できるレポートにも反映される。データはevents.cfgというファイルにあり、これはFMの最新版に至るまで変わっていない。

CM4やFMのユーザには信じられないだろうが、CM3までは試合中は実況テキストしか表示されず、グラフィカルな表示は一切なかった。
これがまた想像力を掻き立てられるというか。固唾を呑みながらテキストを凝視した人は少なくないだろう。テキストのみでの試合進行は、当時、CMをCMたらしめるほどの大きな特徴だった。
もっともこれは、リアルなシミュレーションやデータ量の多さにマシンパワーを割かざるを得ない、という事情があったのだろうと想像している。
ピッチ全体を表示してほしいという要望は前からあり、マシンの性能向上にともなってそのニーズに応えるのは、正常な進化だと思う。


さて、自分が引き継いだ時点でマッチイベント翻訳の進捗は5%以下だったと記憶している。つまりほとんどできておらず、残りの95%以上をやらなければならなくなった。

上述のように、マッチイベントの表示は試合で起きていることを知る唯一の手段なので、翻訳には気を遣ったつもり。
次々に表示が切り替わるため、説明的になりすぎると読んで理解する時間がない。かといって、短くして難しい表現を避けようとすると、元の英語のニュアンスが伝わらないことがある。その辺のさじ加減というか、テンポ良く読めて、なおかつ伝えるべき情報は漏らさないことに苦心した。
この作業を通して、洋画に字幕をつける人ってすごいなーなどと妙に感心したりもした。
しかし慣れると色気が出てくるもので、どうしたら盛り上がるか考えたり、実際のサッカー中継を参考にしたり、今思えば楽しい作業だった。


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